こういうの書くの久々な気がする(働け)。
という訳で、今回はタイトル通り「バエル」の名前の由来についてのご紹介です。
やってそうで実はやってなかった。テヘペロ。
そんな感じで、早速いこうと思います。
まず、ご存知の方がほとんどとは思いますが、鉄血のオルフェンズに登場する「ガンダム・フレーム」の機体の名は、その全てが「ソロモン72柱」から取られています。
「ソロモン72柱」については半ばフリー素材的に様々なエンターテインメント作品で取り上げられているので、今更語るまでもないでしょうが、一応概要を書くと悪魔学(って何だよとかいうツッコミは無しで)において古代イスラエルの王ソロモンが使役するとされる、72柱の悪魔・魔神のことです。
とはいえ、ソロモン王についても語る旧約聖書「列王記」にソロモン72柱の記述はなく、ソロモン72柱に関しては主に17世紀初頭に成立したとされるグリモワール(魔導書)「レメゲトン(ソロモンの小さな鍵)」の第一部「ゴエティア」(ゲーティア、ゴーティアなどの表記揺れ有り)で記述されています。
レメゲトン、特にゴエティアはソロモン王により記されたとされることもありますが、現状ちょっと信憑性に欠ける部分もあるので、作者は不明としておきましょう。
なお、レメゲトンは「ゴエティア」「テウルギア・ゴエティア」「アルス・アルマデル・サロモニス」「アルス・パウリナ」「アルス・ノヴァ」(FGOを知ってる方は、多分いくつか聞いたことあると思われる)の全五部構成となっていますが、実際には別々だった物がレメゲトンに纏められた状態で伝えられた(実際、纏めて長くしておいた方が後世に残りやすいということがある)と言われており、レメゲトン本来の内容はゴエティアだけとする意見もあります。
そんなこともあってか、ゴエティアはレメゲトンの中でも重視されていて、アレイスター・クロウリー(とある作品で名前を聞いた人も多い?)なんかは他の四つを差し置いて、ゴエティアだけは翻訳出版していたりも。
とまあ余談はさておき、ゴエティアにはソロモン王が使役したソロモン72柱を召喚する方法やそれぞれの悪魔の概要、魔法円や印章(シジル)、必要な呪文などが書かれているとされています。
今回の会報のトップ画像には「ガンダム・バエル」の起動画面を載せましたが、この魔法陣のようなモノは悪魔固有の「シジル」が元になっていると見て間違いないかと。バエルだけでなく、バルバトスや端白星の起動時にもそれぞれの悪魔のシジルが表示されます。端白星が速攻でマルコシアスだとバレたのは、このシジルのせい。
また、ゴエティアだけでなく「悪魔の偽王国」や「地獄の辞典」などのグリモワールでもソロモンの悪魔については語られていますが、これらは悪魔の数が違ったりも。
ガンダム・フレームの総生産数が72機と設定されたのは、ソロモンの悪魔が72柱だとしたゴエティアを参考としたモノと見ていいでしょう。
「ガンダム・バエル」の名前の由来となった悪魔「バエル」も、ゴエティアを始めとする様々なグリモワールに記されています。
ゴエティアによれば、バエルは地獄の東方を支配して66の軍団を率いる王であり、序列第一位の悪魔であるとのこと。言うまでもなく、これがガンダム・バエルの形式番号が「ASW-G-01」な理由です。
この「序列」は出席番号のようなモノで、残念ながら実際の強さには関係ないですが、ソロモン72柱の中で「王」とされる悪魔はバエルを含め9柱しかおらず、その中でもベレト、アスモデウス、ベリアルの3柱はガープと並んでソロモン72柱の首領とされているほどです。なので、バエルは72柱の中でも相当上位に位置する存在だと考えられます。
現状、登場しているガンダム・フレームの中では唯一「王」の位を持つ悪魔なので、そういう意味でもバエルは特別扱いされていると言えるのではないかと。多分。
なお、グリモワール「大奥義書」だと、悪魔バエルは6人の上級精霊に仕える18人の下級精霊として名が紹介されており、地獄の宰相たる「ルキフゲ・ロフォカレ」の配下だと言われています。
ルキフゲ・ロフォカレは「拒絶」に対応する形でカバラの邪悪の樹「クリフォト」にも名が挙がる大悪魔で、世界中の富を管理するのだとか――と、ここまで行くと話が終わらないので戻しましょう。
ちなみに、バエル(バアル)もクリフォトに名が挙がっておりまして、そちらでは「色欲」に対応する悪魔とされていたり。
そんな悪魔バエルは召喚された際、様々な姿を取ると言われています。ヒキガエルや猫、人間、またそれら全てを併せ持つこともあるとか。
上の画像は「地獄の辞典」の挿絵として描かれた悪魔バエルですが、猫とヒキガエル、王冠を被った人間の頭が蜘蛛にくっついていますね。何だこの生き物。
バエルはしわがれた声で話すとされ、人を不可視にする能力や知恵を授ける力を持っているそう。「地獄の辞典」では戦いに強いともされます。
ガンダム・バエルは武装的にはハッキリ申し上げて強いとは言い難いですが、リミッター解除をして本気を出せば強いのかも……?
また、悪魔バエルは度々カナン神話の嵐と豊穣の神「バアル」と同一視されます。
バアル信仰は割と広く行われていたようで、様々な地域での神話に「バアル」の名を持つ神は登場します。メソポタミア神話の天空神「アダド」が別名でバアルと呼ばれることが有ったり、カルタゴの主神「バアル・ハモン」やエジプト神話の神「セト」と結び付けられて考えられることも。
特に代表的なのはウガリット神話で、バアルは英雄神として現れ、その活躍が重要視されています。
英雄アグニカ・カイエルが乗ったガンダム・バエルの名前の由来を辿って行った結果、英雄神に繋がるのはなかなか面白いですね。もしかしたら狙って……るのだろうか?
バアルとガンダム・バエルの繋がりというと、上の二つでしょう。うん、完全に一致。
まあ間違いなく偶然だと思いますが、バエルはバアル像(ルーヴル美術館蔵)と同じポーズを取ったことが有りますと。これを公式が狙ってやってたとしたら、流石に怖い。狙ってなくても、運命力か何かが働いた感あって怖いですが。
それはともかく、バアルは旧約聖書の「列王記」や「民数記」「士師記」「ホセア書」などにおいてもその名を語られています。
ただ、旧約聖書での記述には異教の神ということで批判的なモノが多く、列王記が元は「バアル・ゼブル」(気高きバアル)と呼ばれていたところを「バアル・ゼブブ」(蝿のバアル)と言い換え、嘲っているのがその典型。まあ聖書のこういう姿勢は珍しくもないんですが、カナンの神であったバアルが悪魔バエルの側面を持つようになったことは、旧約聖書の影響と言えるでしょう。
同様の例で行くと、エジプト神話の太陽神「アメン」とソロモンの悪魔「アモン」などがあります。
ちなみに、この「バアル・ゼブブ」は時代を経て「ベルゼブブ」「ベルゼビュート」などと表記されるようになります。「蝿の王」と呼ばれ、かのサタンにも並ぶ魔王、地獄を治める大悪魔として扱われていく訳ですね。
悪魔バエルと魔王ベルゼブブは現在では別物として扱われている感じがしますが、元を辿れば同じところに行き着くと。バエルとベルゼブブの関係性、個人的には面白いと思うんですが、私の知ってる限り取り上げてる作品が見当たらないのは何故だ?
そんな訳で、バエルの元ネタ解説でございました。
たまにはこういうのも挙げとかないとね。本サイトをバエル関連のデータベースとして仕上げたい――って訳では全くないんですが、いい年こいた中二病患者としてはこういうの探るの楽しいんで。ええ。
それじゃあ、今回はこの辺で。
運営も2年目に突入しましたが、相も変わらずこれくらいのノリでゆるーくやって参りたい次第。
ところでMETAL ROBOT魂はいつ出ますか???
(記:管理人N)
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